君と同じように悲しい日々が続いている
ご機嫌いかが?
ご機嫌いかが?
ぼくは生活が出来ずにいた。
人は食べ、しゃべり、排泄し、駆け回るというのに、ぼくは立ち止まったままだ。
小学校のころから運動神経は悪い方と気づいていたが、まさかここまで致命的とは思わなかった。
なんだか生活が怖いような気がする。今日より、明日のほうが、日銭が増えるのも、減るのも怖い気持ちがする。
もしかしたら明日死ぬかもしれないと思うと、今日起きて飯を食う気がなくなっていく。
陽差しの燦燦照りつける蒸し暑いこの部屋にずっと寝込んでいたいと感じている。
もっと死を思えよ。バカみたいに何もしたくなくなるから。
†
そんなわけで今日もまた星を見つめながら、空が白むころに万年床に倒れるだろう。
深い闇の奥に堕ちていくような眠気が、すぐにぼくを襲うだろう。
水底でぼくは思った。
今日より明日の方が、自分の知識が増えるのも怖い気がする。
今のままじゃいられなくなるのが恐ろしい気がする。
君のことを忘れるのも時間の問題な気がする。
今日の君も知らないのに今日にしがみつくのもバカみたいな気がする。
血液が淀んでいる。
勃起しなくなってから、夜明け前に走るのが日課になった。
走る姿は誰にも見られたくないから、人のいない時間を選んで、川沿いを走っている。
エネルギーの表出のために、人間は戦争を発明したが、暴力の忌避された現代でもやしっ子はただ走る。
それも出来なければ眠る。光だけはやたら差し込む西向きの部屋で。
だけど、ぼくは思う。息を切らしながら漆黒にゆれる草を踏みつけながら、はるか橋に流れるトラックの光の波を見つけながら、それが深い水面に反射して煌くのを見つめながら。
ぼくは憎悪していた。音楽を、芸術を、宗教を、神を、身体を。歯軋りするほど憎んでいた。
結局はポルノじゃないか。そうならそうと言えばいい。ごまかし、隠して、誰も死んでないように見せて、ゆっくりおびきよせて、含み笑いでごまかし壊す。ゆっくりやがて人を壊す。
教室はみんなで力にうっとりして、気持ち悪いことになっている。
愛人にぶたれたり蹴られたり、教会でペニスを出してみたり、尿や経血を飲んだり、大切なものを冒涜したり、あるいは首を吊ったり、街に火をつけたり、人を殺したりすることの方が、よっぽど正直だろう。
変態や暴力には顔をしかめるくせに、平気な顔で音楽を聴いている連中のことがぼくは一番嫌いだった。
スニーカーの靴底が、小石交じりのアスファルトを刷り上げるのと、微流がコンクリートの岸辺をちゃぷちゃぷと遊ぶ音だけが果てしなく耳に共鳴していく。震えが、来るかもしれない。夜と共鳴する痙攣が。
ぼくは暴力を隠し
今は走る姿を隠している。
生暖かい風が、よく媚びる女のように、全身にまとわりつく。汗が粘り、いやらしいことが始まった。
ぼくはしなやかな身体になりたかった。見かけ倒しの剛な肉体ではなく、ただ走るためだけにある草食動物の大腿筋のような、しなやかな筋肉を求めていた。
もっと死を思えよ。何もしたくなくなるから
まあ、かりんとうでも食ってけよ。それから注意深く寝ることだな。
神様はおれたちの行いを、くまなく全部見ている。
そんなことよりぼくは悲しい。まるで君のように泣いている。
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